診療のご案内

リンパ浮腫の治療

リンパ浮腫を治すために

リンパ浮腫は、リンパ輸送障害の結果、組織内に水分や血漿蛋白が貯留し、びまん性に腫脹する病気です。その病態は複雑で不明な点が多く、それ故多くの患者さんが「これと言った治療法はない、癌が治ったのだから我慢しましょう」等と説明を受け希望を失っています。

72歳 女性 リンパ浮腫

72歳 女性 リンパ浮腫

子宮癌術後右下肢リンパ浮腫を発症した。特に治療法がないと諦め10年間放置した結果、浮腫は著明に悪化し、皮膚は象皮様に硬くなった。

リンパ浮腫は決してどうしようもない病気ではありません。日常生活に支障を来さない程度には必ず改善できます。しかし、そのためには以下の4点を守って頂く必要があります。

1)スキンケア・・・患肢の外傷、熱傷、虫さされ、水虫、ひび割れに気を付け清潔を保つ

(患肢の清潔と感染の防止)もっとも重要なことです。リンパ浮腫肢は感染にとても弱いのです。一旦感染を併発しリンパ管炎(肢の熱感、発赤と高熱)を起こすと、その度に大切なリンパ管が閉塞して、浮腫は増悪します。毎日の入浴、または足浴はとても大切です。足の水虫(白癬症)には特に注意しましょう。万が一リンパ管炎の症状がみられた場合は、まず安静を保ち、患肢を挙上して水枕などで冷やしてください。高熱が続く場合はすぐに病院を受診されることを勧めます。

2)リンパ誘導マッサージ

これは自分で出来る、また自分でしなければならない最も大切な治療法です。このマッサージの基本は、浮腫のない正常な駆幹からマッサージを開始して順に浮腫の強い末梢へ及ぶことと、さらに、決して強くさすったりするのではなく、皮膚を小さくずらす感覚でリンパ液を誘導すると言うことです。リンパ液の誘導経路やマッサージの方法など専門家の指導が必要です。最初は病院できちんと指導を受けましょう。マッサージにより皮膚は確実に柔らかくなってきます。1回1時間を毎日1~2回行います。マッサージ後は、次に示す圧迫療法が重要です。

3)圧迫療法(伸縮度の低い弾性包帯または弾性ストッキング)

伸縮度の低い(伸び率の小さい)弾性包帯または弾性ストッキング※を用います。下肢静脈瘤用よりは強めの圧が必要です。ストッキングにより一旦減少した浮腫液の再貯留を抑えるため、24時間、常に装着することが望ましいです。慣れるまで大変ですが、皮膚が柔らかくなってくると足が楽になってきます。不適切な弾性包帯や弾性ストッキングは、症状の悪化や炎症を起こすことがありますので、病院での診察を受けましょう。

※弾性ストッキング・弾性包帯の保険申請について
購入する弾性ストッキング・弾性包帯が決まれば、その商品に対する指示書を医師に記入してもらいましょう。その指示書と購入した際の領収書を持参して、国保は各市町村の窓口に、社会保険では社会保険事務所や各保険窓口に申請して下さい。材料費の7割が返還されます。1回5万円まで、年に2回までの申請が認められています。

4)圧迫下の運動療法

リンパ管は主に皮下組織に存在するφ1mmほどの透明な血管で、下肢の静脈と同様に弁があります。弾性着衣と筋肉間で皮下組織を挟み込み軽い運動を繰り返すことで、リンパ管を繰り返し圧排し、リンパ液を運搬します。運動は散歩や簡単な筋肉運動で結構です。圧迫をしないで運動することや、マラソンやテニス・登山など過度な運動では、かえって悪化することもあります。運動は毎日適度に習慣としてできるものを選んで下さい。時々、負担の大きい運動をすることは有効とは言えません。

5)薬物療法

2011年6月に厚生労働省委託事業である「がんのリハビリテーション研修委員会」より「現時点ではリンパ浮腫単独に対する効果的な薬剤はない」という答申が出されました。当院ではこれまでエスベリベン(リンパ球を活性化し、浮腫肢内蛋白貯留を減少させる薬)、または紫苓湯(漢方薬)を処方してきましたが、これらの薬物には明かなエビデンス(効果のデータ)がないと言うことで現在はほとんど処方されなくなりました。エスベリベンは製造中止となっています。
しかし、高齢者で急激に浮腫が強くなった場合や両下肢の重症の浮腫では、利尿剤や紫苓湯を処方することがあります。また、リンパ管炎を併発した症例には抗生物質、白癬を合併している症例では抗真菌剤を使用します。

皆さんいかがでしょうか? 上記の保存的療法を守り健康的な柔らかい足にしましょう。